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【書評】美しい距離/山崎ナオコーラ 文春文庫

  • 執筆者の写真: SHO WATABE
    SHO WATABE
  • 2020年4月13日
  • 読了時間: 2分

黄色を基調とした印象派風の表紙に惹かれて購入。

読み進めるうちに、これは菜の花を表していたのだと気づく。


あらすじ

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主人公は生命保険会社に勤める中年サラリーマン。

15年前に上司の娘と結婚。

(初めて出会った時、妻は菜の花模様のワンピースを着ていた。)

子供には恵まれなかったものの、妻はサンドウィッチ屋をライフワークのように営みながら幸せに過ごしていた。


そんな中、妻ががんに侵されてしまう。

おそらく余命も長くない。


主人公は時短制度などを利用しつつ、入院中の妻との時間を大切にしながら過ごす。


時間とともに変化していく妻。

蓮の花が咲く頃、ついにその時を迎える・・・。

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物語は基本的に病室内で進んでいく。

クセのない文章で、主人公の心理描写や妻の病状が進んでいく様子が描かれている。

容量的には文庫本で195ページ。

セリフも多いため、読了するのに時間はかからない。


主人公があまり感情を表に出すタイプではないため、文章とマッチしており、感情移入しやすい。


タイトルの「美しい距離」は主人公と妻の距離を表している。

この小説を読み終わると、距離は近ければいいというものではなく、遠いからこそ美しいと感じることもあると気づかされる。

また、妻の母、仕事のパートナー、主治医などとの微妙な距離感も感じられる作品。


確実に死に向かいながら流れる時間。

この時をどのように感じ、行動しながら過ごすのが正解なのか。

もっとも正解などないのだが、考えさせられてしまう。


帯で引用されている「死ぬなら、がんがいいな。」という文章も印象的。


https://www.amazon.co.jp/dp/4167914263/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_naTnEbE06V3T6

 
 
 

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