【書評】星の子/今村夏子 朝日文庫
- SHO WATABE
- 2020年4月30日
- 読了時間: 2分

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○あらすじ
主人公は林ちひろという中学生の女の子。
子どもの時は体が弱く、両親にとても心配されていた。
ある日、父親が同僚から「原因は水のせいである」と言われ、特別な水をもらう。
それを使ったところ、ちひろの体調は急激に回復。
ここから両親は新興宗教にハマってしまう。
その影響で、親戚からは疎まれ、ちひろの姉は家出してしまう。
そんな環境で育ったちひろの日常や学校生活、家族との関わりなどを描いた作品。
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個人的に印象に残ったのは、南という憧れ先生にちひろが罵倒されるシーン。
思春期ならではの想いが一瞬にして破壊されていく感じがなんとも切ない。
ただその後、友達の彼氏である新村が辿々しくも一所懸命慰めているシーンはなんともいえないおかしさがあり、微笑ましい。
巻末には小川洋子さんと著者の今村夏子さんの対談が収録されている。
この中で今村さんは「自分の経験値の中でしか語れないんです。」と言っている。
おそらくこの経験をもとに書いているため、ちひろの視点がリアルに表現され、すんなり読める作品になっているのだと思う。
この作品は芥川賞と本屋大賞のWノミネート作品で、野間文芸新人賞を受賞している。
小説の内容が良いのはもちろんであるが、巻末収録の対談も各人の小説の作り方や、作品を読むときの視点などがわかり、それも含めとても読み応えのある一冊。
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