【書評】あひる/今村夏子 角川文庫
- SHO WATABE
- 2020年5月7日
- 読了時間: 1分
今村夏子さんの作品を読むのは「星の子」以来2作品目。
本書は「あひる」「おばあちゃんの家」「森の兄妹」の3篇を収録。
星の子にも言えることだが、難しい言葉は一切使われず、会話文も多い。
そのためすんなり読めるが、なぜか読み終わった後に「純文学を読んだ!」という充実感にも似た感覚に襲われる。
小説をあまり読まない私であるが、この著者の凄さはわかる。
この本で私の印象に残ったのは「森の兄妹」のワンシーン。
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手汗をかきやすい小学生のモリオは、借りていたマンガを友人に返した際、「ページが湿っている」と言われ恥をかいてしまう。
ある日、ひょんなことから学校でマンガを借りることができたモリオ。
その帰り道、道端に軍手が落ちていたのを拾う。
これを使えばマンガを湿らせずにすむと思い、軍手をはめてマンガを読むことに熱中していた。
そんな時、母親が帰宅。
この軍手をみた母親が激怒。
有無を言わさず軍手を捨ててしまう。
その晩、モリオは泣き疲れて眠る。
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子どもの頃、大人に対してこのような無力感を味わったことが一度はあると思う。
その際の哀しさや切なさが、短い文章でシンプルに描かれていて、心が揺すぶられた場面であった。
どの作品もハッピーエンドともバッドエンドとも取れない複雑な結末。
ただ、この著者の場合はそれが心地よくもある。
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