【書評】ことり/小川洋子 朝日文庫
- SHO WATABE
- 2020年4月27日
- 読了時間: 1分

小川洋子さんの作品は「博士の愛した数式」を10年以上前に読んで以来、2作目。
よい意味で無駄な起伏なく時間が流れていく雰囲気は変わっていない。
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○あらすじ
11歳の時、急に人間の言葉を喋らなくなった兄。
代わりに「ポーポー語」という小鳥の言葉を喋るようになる。
このポーポー語を唯一理解できた弟が本作の主人公。
幼少期の家族関係、青年期の兄との二人暮らし、兄の死、メジロを趣味の道具として扱う男との出会いなど、主人公の子供時代から最期までを淡く優しい文章で描いた作品。
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個人的に好きなシーンは、主人公と若い女性図書館司書との場面。
この作品の大半は社会的適応できていない兄と、それを支えている弟の中年男性2人を中心に描かれている。
そのため全体的に寂しく、色が薄く感じてしまうが、この場面は暖色系のパステルカラーを感じることができる。
あまり人と接することを得意としない主人公と、優しく清らかな心を持つこの女性とのやりとりがなんとも微笑ましい。
そして突然別れの時が訪れた際も、筆者の誇張しすぎない文章のおかげで、過度な落胆は覚えず、逆に心地よい切なさを感じる。
2012年度芸術選奨の文部科学大臣賞受賞もうなずける。
https://www.amazon.co.jp/dp/4022648031/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_HIosEbGGXE7T9
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