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【書評】劇場/又吉直樹 新潮文庫

  • 執筆者の写真: SHO WATABE
    SHO WATABE
  • 2020年4月23日
  • 読了時間: 2分


又吉さんの作品は芥川賞受賞直後に火花を読んで以来、2作目。

火花の時も感じたが、主人公に又吉さんの経験や考え方が多く反映されている気がする。


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○あらすじ

小さな劇団で脚本を書いている永田という若い男が主人公。

全てがうまくいっていない。


ある時、ふと立ち止まった画廊の前で服飾の大学に通う沙希と出会い、流れで同棲生活が始まる。


演劇に対する哲学のみ一丁前。

実績がないくせに、他人の意見を聞き入れない永田は周りを傷つけていく。


劇団員はやめていき、もちろん稼ぎも少ない。

生活はどんどん沙希に依存していく。


そんな永田を100%受容していた沙希も、永田との心の距離や周りの環境が変化していくにつれ、メンタルが悪い方向に向かっていく・・・。

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この作品の面白いところは永田のダメ男ぶり。

永田自身も自分がダメ男であることは薄々感づいているがそれを認められない。

その態度が周りの劇団員を傷つけ、沙希を変え、自分の首を締めていく様に引き込まれていく。


特に印象的なシーンは終盤に元劇団員とメールで怒涛の喧嘩をする場面。

完全に開き直って逆ギレしている様を見て、

「永田はもう戻って来れないくらいダメ人間になってしまったなぁ」

というなんともいえない切なさを感じてしまった。


ただ、そんな永田になんとなく共感してしまっている自分がいる。

きっとダメ男の素質があるのだろう・・・。


https://www.amazon.co.jp/dp/4101006512/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_S7nsEbSE9CEDK

 
 
 

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